
セルフ・リーダーシップとは
実行に必要となる自己の方向性や自己のモチベーションを確立するために自分自身に影響を与える過程。
「Self-leadership has been more broadly defined as “the process” of influencing oneself to establish the self-direction and self-motivation needed to perform.」
(出典:「Mastering Self-Leadership」by Charles.C.Manz&Christopher P. Neck)
と定義しています。あるいは、
具体的な一連の行動方略や認知方略を用いて自分自身の行動を統制したり,自分自身に影響を与えたり方向づけたりするプロセスである
(Jeffery.D.Houghton…2006)
と定義しています。
ようは、目的・目標に沿って、誰か(例えば上司など)の指示・命令ではなく、自発的に行動し、自己コントロールし導くこと(私釈)を言います。
これは、コヴィー氏の「7つの習慣」の第一と第二の習慣に該当します。
これまでの「セルフ・リーダーシップ」開発は、会社・組織が主体であり、その一人としての対外的影響力を主としていた教育が主でした。いわゆる、管理職やマネジャーのための「セルフ・リーダーシップ」開発であったわけです。しかし、それには限界があるとされています。
本来は、組織側の取り組みと個人側の取り組みの相互作用が必要であります。考え方として、組織と個人、そして外部的影響力と内部的影響力の4つのレベルがあるということです。
ということは、個人の「セルフ・リーダーシップ」が自身(内部)に影響をもたらし、それが組織など(外部)に影響を与えていくべきだと考えるべきでしょう。
これは、「7つの習慣」でいうところの「インサイドアウト」の概念、内部から生じるものによって外部に影響を与えるということです。
自己と他者(家族や友人も含め)は、生きていく上で相互関係にあるとすれば、仕事に限らず、自己の言動や思考は少なからず外部に影響を与えています。
言葉使い、態度、表情、行動そのものは勿論のこと、価値観や思考、プライドなどもそうです。
ピーター・ドラッカー(Peter Ferdinand Drucker)の
マネジメントは物事を正しく行なうことであり、
リーダーシップは正しいことをすることである。
このコトバから察するに、「セルフ・リーダーシップ」は「正しいことを信念」とし、「セルフ・マネジメント」は「正しいことを実践する」ということが言えます。
ただ、モチベーション(やる気)を高め、ポジティブに楽しく生活していくことが、「セルフ・リーダーシップ」「セルフ・マネジメント」ではないということになります。
リーダーシップ理論における学者や著名人は、必ずリーダーシップを発揮する前提、重大な要素として、「目的・ビジョン(アジェンダ)の設定」を強調しているように、「正しい目的・ビジョン」に沿って、「セルフ・リーダーシップ」を成長させていくことになるのです。
セルフ・リーダーシップの育成方法
「セルフ・リーダーシップ」を育成していくための基本的な方略として、主な2つ。
「社会的学習(社会的認知理論)」と「内発的動機付け理論(intrinsic motivation)」です。
「社会的学習」
一言でいうと「モデリング」
(=観察学習、代理学習であり、モデルとなる人を直接または間接的に観察しながら学習すること)。
自己のリーダーシップも他者に影響を及ぼすものと考えれば、自己も他者から影響されるということになります。ですから、自らの理想とする「リーダーシップ像」を意識しながら、モデルとなる他者を観察しつつ、学習していきます。
この社会的学習(観察学習)は、乳幼児期から行なわれている(母親を観察して学ぶ)ものであり、人間にとって得意な学習方法かもしれません。
今回は、現存している他者(例えば、親・上司・先輩・尊敬する人・著名人など)、もしくは歴史上の人物の伝記などから得られることでしょう。
一般的に、自分自身に適したメンターやロールモデル(模範者)となる人を探し出し、その生き様や価値観、思考などを吸収していきます。
モデリングとする人は、人間的かつ知性的な方が好ましいと思われます。
※社会的学習については、Albert Banduraアルバート・バンデューラらが有名。
ただ、これだけでは限界があるとし、もう一つの「内発的動機付け」によって「セルフ・リーダーシップ」を修得していきます。
「内発的動機付け」
一言でいうと「やる気を促す」(=モチベーション制御)。
目的や目標が定まったとしても、それを達成するためには持続力が必要です。ただ、”我慢”という意識ではなく、自発的にかつ率先して行動するという観点から、そのメンタル的な要素を自らコントロールしていく必要があります。
この動機付けの方法として2つあります。
「自己効力感(Self efficacy)」と「期待感」(物的、精神的報酬)です。
他者からの承認・評価(承認欲求、愛情欲求などを満たす)を期待したり、成果に対する物的報酬(オペラント手法。自分へのご褒美も含む)を期待したりして、その獲得による満足感を得ることが動機付けになります。どちらかというと「外発的動機付け」になるものです。
人は、過去の経験の中で、他者に褒められたこと、評価されたこと、あるいは報酬を獲得したことなどを再現したいために、その時の行動を選択しがちになります(確実性の選択)。
これは外部影響による動機付けであるため、短期的な目標などには効果的ですが、継続するという観点で、内部影響による「内発的動機付け」が重視されます。
それが、「自己効力感」です。やりがいを感じるということにつながります。
「目標達成感」「他者への貢献感」などになりますが、これは報酬がなくても自発的に行動できるものになります。
その特徴として、
- 「有能感=成果または目的遂行に対する貢献度」
- 「自己コントロールの実感(自己決定感)」
- 「重要な他者からの受容による目的感を得る(対人交流)」
があります。
これらを楽しむことができれば、さらに次のステップへと自ら進めることができるために、成長していくというわけです。
「外発的動機付け」には、昔から言われている「アメとムチ」(報酬と懲罰)の手法があります。近年の学者研究では重要ではないとされていることもあり、心理学者アドラーも「アメとムチ」については否定的です。
私自身の(10年間小学生サッカーチーム指導者としての経験上)、「アメとムチ」は効果がないと感じています。それでも、子供であるために「アメ」も準備し、甘やかさないために「ムチ」も実行しました。ただ、成果を出させるためには、チームではなく個々人のやるべきことを理解させることが重要であることを理解することができました。
自己の目標の成果に対するご褒美と罰は、スモールステップ式の目標達成術であれば、私もお勧めしています。ただし、これは習慣化させるための期間のみであって、前記した「内発的動機付け」による行動であれば、不要であることは間違いありません。
これについては、ダニエル・ピンク氏の「やる気に関する驚きの科学」(TEDで語られている)で、「アメとムチ」より成果を上げている手法があるということです。(例としてGoogle社の手法などがありますが、ネット上の噂ですと、すでにその方法は止めているようですが・・・)
※参考(TED)
http://www.ted.com/talks/lang/ja/dan_pink_on_motivation.html
この「セルフ・リーダーシップ」は、自分だけではなく、今後他の人へのアドバイス、支援にもつながることです。
前記した、内から外への「リーダーシップ」キャリアは、会社組織に限らず、家族・コミュニティでも活かせるものだということが言えます。
その身につける方法として、参考になるのが、
「70・20・10の法則」
です。
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